新型コロナウイルス感染症に対する企業の意識調査(2022年2月)

業績にマイナス影響見込むも、企業の4割コロナ融資受けず
~ 感染第6波により 材料不足・需要減・人員不足の三重苦が目立つ ~

2022年3月、世界保健機関(WHO)が新型コロナウイルス感染症の流行を「パンデミック」と宣言して丸2年が経過した。3月に入りやや減少がみられるものの、1日あたりの新規感染者数が5万人を超える日が続くなど、依然として国内外問わず日常生活や経済活動に影響を与えている。


また2022年3月18日現在、18都道府県を対象に適用されていたまん延防止等重点措置の解除が決定している。しかしながら、引き続き生活スタイルや働き方の変化が求められるなど、さまざまな場面で影響を及ぼしている。


そこで、帝国データバンクは、新型コロナウイルス感染症に対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2022年2月調査とともに行った。
  • 調査期間は2022年2月14日~28日、調査対象は全国2万4,213社で、有効回答企業数は1万1,562社(回答率47.8%)なお、新型コロナウイルス感染症に関する調査は、2020年2月から毎月実施し今回で25回目

調査結果

  1. 業績に『マイナスの影響がある』企業のうち、現在約4割でコロナ関連融資を受けていない

    新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」)対策として実施されている「コロナ関連融資」に関する自社の状況[1]と新型コロナによる自社の業績への影響をみると、業績に『マイナスの影響がある』企業のうち39.8%の企業でコロナ関連融資を現在借りていないと回答した。企業からは、「十分なキャッシュを確保しているため」(老人福祉事業、大阪府)や「融資が必要なほど業績の落ち込みがない」(造園工事、北海道)といった意見が聞かれた。4割近くの企業では、業績への悪影響を受けつつも、切迫した資金繰りの状態ではない様子がうかがえた。


    他方、現在借りている企業は55.9%と半数超となった。企業からは、「なんとか会社が保っている状況であり自社の取り組みにも限界がある。早く、新型コロナの収束を願い、国のサポートもより強くお願いしたい」(旅行業代理店、福井県)といった切実な声が聞かれた。

    業績に『マイナスの影響がある』企業とコロナ関連融資との関係

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  2. 業績へのマイナス影響、感染第5波のあった2021年8・9月以来の2カ月連続で7割超え

    2022年2月の新型コロナによる自社の業績への影響は、『プラスの影響がある』(「既にプラスの影響がある」と「今後プラスの影響がある」の合計)と見込む企業は3.4%にとどまり、「影響はない」は19.7%となった。


    一方で、『マイナスの影響がある』(「既にマイナスの影響がある」と「今後マイナスの影響がある」の合計)と見込む企業は71.8%(前月72.8%)となり、2カ月連続で7割超となった。2カ月連続で7割を超えるのは、感染第5波のあった2021年8・9月以来である。


    業績への影響(2022年2月)と『マイナスの影響がある』企業の割合の推移

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  3. 飲食店やホテルなど個人消費に関連する業種でマイナス影響続く

    業種別に『マイナスの影響がある』企業をみると、まん延防止等重点措置や長らく続く消費者の外出自粛の影響から飲食店やホテルなど個人消費関連の業種を中心に、依然として悪影響が続いている。特に、「飲食店」(92.6%)や「旅館・ホテル」(91.5%)では9割の企業が業績にマイナスの影響があると見込んでいた。


    企業からは、「新型コロナウイルスの感染拡大の度に経済対策(GoToトラベルや県民割など)が中止される事で景気回復が腰折れする」(旅館、神奈川県)や「酒類を取り巻く環境は、在宅での飲酒が増えたとはいえ、酒類全体の消費は大きく減退している」(清酒製造、宮城県)といった意見などが多数あがっており、経営を取り巻く環境の厳しさがうかがえた。

    個人消費関連業種における『マイナスの影響がある』企業の割合

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    一方で、「海外ウェディングメインだったが、2年前から沖縄県・石垣島へ進出。今年度は新規獲得のために新しい形のウェディングなどを展開すべく、動いている」(結婚相談、東京都)や「新販路の開拓、営業力強化と組織改編、新業態開発、新商品開発、業務改革などに取り組み一部成果が出ている」(喫茶店、東京都)などといった厳しいながらも前向きな声もある。

  4. 『製造』を中心にBtoB企業では、材料不足・需要減・人員不足の三重苦

    また、『製造』の12業種に着目してみると、「出版・印刷」(85.6%)と「アパレル製造(繊維・繊維製品・服飾品製造)」(83.0%)で8割を超えた。次いで「パルプ・紙・紙加工品製造」(79.4%)、「輸送用機械・器具製造」(78.3%)でマイナスの影響を見込む割合が高くなっている。


    企業からは、「新型コロナの影響で、自動車産業界が停滞、部品加工の数量が製品によっては激減している」(金属プレス製品製造、群馬県)や「冠婚葬祭やお土産、ホテルアメニティ関連の箱について非常に動きが悪い」(段ボール箱製造、愛知県)、「従業員の感染、またはその家族の感染による休暇で工場労働力が不安定になっている」(印刷、大阪府)といった声が多くあがっていた。


    『製造』を中心に、BtoB企業においては、感染第6波の影響から、材料不足・需要減少・従業員の罹患による人員不足という3つの困難な状況が全国的に起こっている。


    『製造』上位5業種における『マイナスの影響がある』企業の割合

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  5. 巣ごもり需要による好影響あるも、ピークと比べ一段落の模様

    業績に『プラスの影響がある』と見込む企業は3.4%(再掲)にとどまっている。業種別にみると、「飲食料品小売」(16.2%)を中心に飲食料品を取り扱う業種が上位に並んでいた。しかしながら、以前と比較するとやや巣ごもり需要に関する消費も落ち着きがみられてきている。とりわけ、スーパーマーケットを含む「各種商品小売」(8.9%)では、46.5%の最高水準となった2020年10月と比較すると大きく低下している。


    他方一部では、「新型コロナウイルス対策としてカテキンの効果が見直されているため、新商品開発の材料にしたい」(コーヒー・茶類卸売、神奈川県)とあるように、2年にわたる新型コロナの影響のなか、企業も柔軟な対応を行っている様子がうかがえた。


    「各種商品小売」における『プラスの影響がある』企業の割合

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  6. まとめ

    新型コロナ感染第6波の影響により2カ月連続で7割を超える企業で業績にマイナスの影響を見込んでいる。そのうち4割はコロナ関連融資を受けていない結果となった。しかしながら、飲食店やホテルなどでは外出自粛の影響を多大に受けており、厳しい経営環境が続いている。さらにBtoB企業においても、全国的に材料不足・需要減・人員不足の三重苦に直面していた。


    一方で、前向きな取り組みを行う企業もおり、感染拡大から2年の間に厳しいながらも新事業へ挑戦や新たな需要の獲得など日本企業の柔軟性や適応力の高さがうかがえている。
    企業やビジネスパーソンは、新しいことに恐れずチャンレンジすることが大切と言えそうだ。



    [1]帝国データバンク「新型コロナ関連融資に関する企業の意識調査」(2022年3月17日発表)。『現在借りていない』は「借りておらず、今後も借りる予定はない」「借りていないが、今後借りる予定がある」「すでに全額返済し、今後借りる予定はない」「すでに全額返済したが、今後借りる予定がある」の合計。『現在借りている』は「現在借りており、今後、追加融資を受ける予定はない」「現在借りており、今後、追加融資を受ける予定がある」の合計



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