人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)
正社員の人手不足は51.4%、高止まり続く
「旅館・ホテル」は8割に迫る高水準
~ 非正社員では「飲食店」が85.2%、コロナ前の水準に ~
「旅館・ホテル」は8割に迫る高水準
~ 非正社員では「飲食店」が85.2%、コロナ前の水準に ~
政府は4月28日に新型コロナウイルスの水際対策を終了し、さらに5月8日には感染症法上の分類が5類に移行される。行動制限の緩和にともない人流が戻ってきたことで消費マインドが改善し、「アフターコロナ」に向けて国内景気は回復傾向にある。
一方で、コロナ禍で一時的に悪化していた需要が急回復したため多方面で供給が追い付かない状況が続いている。とりわけ、行楽シーズンを迎えて観光業や飲食業などの業種で顕著となるなか、企業の人手不足感について調査した。
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調査期間は2023年4月17日~4月30日。調査対象は全国2万7,663社、有効回答企業数は1万1,108社(回答率40.2%)
なお、雇用の過不足状況に関する調査は2006年5月より毎月実施しており、今回は2023年4月の結果をもとに取りまとめた
- 人手不足割合は正社員で51.4%、4月としては過去最高 非正社員でも4年ぶりに3割超
2023年4月時点における全業種の従業員の過不足状況を尋ねたところ、正社員が「不足」と感じている企業は51.4%だった。
例年4月は新卒新入社員が加わることもあり、月次ではやや低下する傾向があるものの、5割を上回った。前年同月比で5.5ポイント増加しており、4月としては過去最高を記録した。
また、非正社員では30.7%となり、4月としては4年ぶりに3割超の水準に上昇した。
人手不足割合推移(各年4月)
- <正社員・業種別> 「旅館・ホテル」が75.5%でトップ、DX対応の「情報サービス」は7割を超える
正社員の人手不足割合を業種別にみると、「旅館・ホテル」が75.5%で最も高かった。月次ベースでは6カ月連続で業種別トップとなり、深刻な人手不足が続いている。次いで、IT人材不足が顕著な「情報サービス」も74.2%で続いた。実際に企業からは「案件が多いものの人手が足りない、という状況が継続している」(ソフト受託開発、神奈川県)などの声が聞かれた。
さらに、「メンテナンス・警備・検査」(67.6%)は9カ月連続、「建設」(65.3%)は12カ月連続で6割超の高水準となった。また、2024年4月から時間外労働の上限規制が設けられることで“物流2024年問題”として注目されている「運輸・倉庫」も63.1%と高かった。また、レンタカー業界などを含む「リース・賃貸」(60.7%)はコロナ禍以降で最も高くなった。レジャーシーズンの到来やビジネス需要の高まりが背景にあると考えられる。
正社員の人手不足割合(上位10業種)
- <非正社員・業種別> 「飲食店」と「旅館・ホテル」が突出、小売・サービスなど個人向け業種で高く
非正社員の業種別では「飲食店」が85.2%で唯一8割を超え、最も高かった。飲食店は、パート・アルバイトなどを含む非正社員の就業者全体の7割以上を占めている特徴があるなかで、就業者数がコロナ前まで回復していない状態が続いている。次いで、正社員で業種別トップだった「旅館・ホテル」(78.0%)は、2番目の高水準となった。その他、「飲食料品小売」(58.7%)や「娯楽サービス」(47.2%)など、個人向け業種が上位に多く並んでいる。
非正社員の人手不足割合(上位10業種)
- 今後の見通し:特に深刻な「旅館・ホテル」と「飲食店」、インバウンド需要の回復に対応できるかが焦点
今回の調査では正社員の人手不足感は51.4%、非正社員は30.7%となった。アフターコロナに向けての動きが本格化するなか、企業の人手不足感は高止まりの状況にあることがわかった。なかでも「旅館・ホテル」の人手不足の割合は8割近い水準となり、「飲食店」の非正社員不足も突出していた。企業からは「新型コロナ禍で抑制されていた人流の活性化や旅行支援、イベントやスポーツ大会の正常化などで高稼働の状況が続くが、人手不足で十分な対応ができない」(大分県、旅館)との声が聞かれる。今後は訪日外国人客の更なる増加が期待されるなかで、外国人労働者などの活躍による人材確保やDXなどによる合理化投資が急がれる。
<参考>「旅館・ホテル」「飲食店」の人手不足割合 月次推移
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