女性登用に対する企業の意識調査(2024年)
女性管理職の割合は平均10.9%、初の1割超え
~ 課題認識、「女性の昇進意欲」が企業規模間で大きな差 ~
加速度的に進む少子高齢化による生産年齢人口の減少にともない、さらなる人手不足の深刻化が懸念されている。このような状況下、女性の潜在的な労働力を掘り起こすとともに女性活躍を推進することで、労働力不足が深刻化する企業の支え役になることが期待されている。
政府は、女性管理職の割合が2020年代の可能な限り早期に30%程度となることを目指している。厚生労働省は、今年2月から雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会を重ね、「女性管理職比率については、企業の実情を踏まえつつ開示必須項目とすることが適当である」旨の報告書をまとめた。
また「女性版骨太の方針2024」では、東証プライム市場に上場する企業の女性役員の割合を、それまで設けられていた目標の「2030年までに30%以上」に加え、「2025年までに19%」にする新しい成果目標が掲げられるなど、企業における女性活躍の推進がますます求められている。
そこで、帝国データバンクは女性登用に対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2024年7月調査とともに行った。
- 調査期間は2024年7月18日~31日、調査対象は全国2万7,191社で、有効回答企業数は1万1,282社(回答率41.5%)。なお、女性登用に関する調査は、2013年以降、毎年7月に実施し、今回で12回目
女性管理職割合の平均は10.9%、調査開始後初めて10%台とじわり前進
自社における管理職(課長相当職以上)に占める女性の割合を尋ねたところ、「30%以上」が11.4%、「20%以上 30%未満」が6.4%、「10%以上 20%未満」が9.1%、「10%未満」が25.5%だった。また、管理職が全員男性である企業は43.0%と前年から2.1ポイント低下したが、全項目のうち最も高かった。
政府目標の「30%程度」を達成している企業の割合は前年から1.6ポイント増と、上昇幅は過去最大となり、2013年の調査開始以降で初めて10%を超えた。上昇スピードが加速する兆しがみられる。一方、「10%未満」(0%を含む)は68.5%となり初めて7割を下回った。
管理職に占める女性の割合の平均は10.9%と調査開始後初めて10%台に乗った 。前年からの上昇幅は1.1ポイントと2021年と並び過去最大の伸びとなった。
女性管理職の割合
女性管理職の割合を規模別にみると、「大企業」が平均7.6%で最も低かった。他方、「中小企業」は11.5%、うち「小規模企業」は14.4%となり、規模が小さい企業ほど女性管理職割合の平均は高い状況が続いている。
業界別では、女性従業員が比較的多い『小売』が19.4%で全体(10.9%)を8.5ポイント上回り、トップとなった。次いで、『不動産』(16.7%)、『サービス』(15.3%)、『農・林・水産』(12.7%)が上位に並んだ。一方で、工場における三交代制などで生活時間が不規則になりやすい『製造』や、2024年問題など長時間労働のイメージが強い『運輸・倉庫』『建設』など、女性従業員数が比較的少ない業界は低水準にとどまった。
女性管理職割合の平均 ~ 企業規模、業界別 ~
女性役員割合の平均は13.5%と過去最高も、「役員が全員男性」の企業は依然50%を超える
自社の役員(社長を含む)に占める女性の割合は平均13.5%と、前年(13.1%)から0.4ポイント増加し、過去最高となった。一方で、役員が全員男性の企業は52.4%と依然として半数を超えた。
女性役員割合の平均を規模別にみると、「大企業」が6.7%、「中小企業」が14.8%、うち「小規模企業」が19.1%となり、女性管理職と同様に規模が小さい企業ほど割合が高い結果となった。
女性役員の割合
32.7%の企業が「女性管理職割合の増加」を見込む。上場企業など規模が大きいほど「増加する」割合高く
自社における女性管理職の割合が、現在と比較して今後どのように変わると考えているか尋ねたところ、女性管理職の割合が「増加する」と見込んでいる企業は32.7%となった。他方、「変わらない」は42.4%だった。
女性役員については、今後「増加する」と考えている企業は13.0%となった一方で、「変わらない」は57.2%と過半数を占めた。
従業員数別にみると、「301人以上」では女性管理職の割合が今後「増加する」と見込む企業は65.0%と全体(32.7%)を32.3ポイント上回っており、女性役員の割合についても全体より15ポイント近く高かった。また、全区分のうち、従業員数「301人以上」における前年からの増加幅は管理職・役員ともに最大となった。とりわけ行動計画の策定や公表が義務化されている従業員数が多い企業では、女性管理職・役員の割合が増加すると見込む企業がより多い結果となった。
2023年3月期決算の有価証券報告書から「女性管理職比率」や「男女間賃金格差」などの開示が義務化された「上場企業」では、今後女性管理職が「増加する」と考えている企業の割合が67.1%となり、全体より30ポイント以上高かった。また、女性役員が「増加する」とする割合も35.6%と全体を20ポイント以上上回った。
女性管理職・役員割合の今後の変化
女性活躍推進策、「公平な評価」が60%超でトップ。中小企業が行う対策は停滞感が漂う
女性の活躍推進のために自社で行っていることについて尋ねたところ、「性別に関わらず成果で評価」が61.2%でトップとなった(複数回答、以下同)。「性別に関わらず配置・配属」(50.6%)が続き、男女平等に関わる項目が上位に並んだ。以下、「女性の育児・介護休業の取り組み促進」(32.8%)といった、女性が働きやすい環境づくりに関する対応策が続いた。
また、「就業時間の柔軟化」(27.5%)および「時短勤務の対応」(27.1%)といった男女問わず働き手の家庭と仕事の両立への支援となる取り組みを行っている企業はおよそ4社に1社だった。
規模別では、「女性の育児・介護休業の取り組み促進」や「男性の育児・介護休業の推進」で大企業が中小企業を20ポイント超上回り、働き方に関する対策に規模間で大きな格差がみられた。
女性活躍推進のために行っていること(複数回答)
要因や課題、「家庭と仕事の両立のしづらさ」が唯一50%超。「成果で評価」のみ、中小企業が上回る
日本において女性管理職の割合が上昇しない要因や課題について尋ねたところ、「女性従業員の家庭と仕事の両立がしにくい」が54.4%でトップとなり、唯一50%を超えた(複数回答、以下同)。次いで、「日本社会の性別役割分担意識の存在」(38.5%)、「女性従業員が昇進を望まない」(36.2%)が続いた。
規模別でみると、「その他」を除く13項目中「性別に関わらず成果で評価している」以外の12項目で「大企業」が「中小企業」を上回った。とりわけ「女性従業員が昇進を望まない」は11.3ポイントの開きがあった。
企業からは、「女性の妊娠や育休などにより、働けない期間が生まれ、キャリアや経験年数が不足してしまう」(医療・福祉・保健衛生)や「徐々に女性の意識改革は進んでいるが、昇進にともなう重責を好まない傾向にある」(建設)といった声が多数あがった。
女性管理職の割合が上昇しない要因や課題(複数回答)
まとめ
本調査によると、女性管理職割合は平均10.9%と過去最高を更新し、調査開始以来初めて10%を超えた。政府目標である「女性管理職30%」に該当する企業の割合も過去最高である11.4%となった。依然として政府が目指す目標に対して開きはあるが、女性管理職の割合の上昇幅は過去最大となり、じわり前進していることが分かった。
女性の活躍推進のために自社で行っていることについては、男女平等に関する項目の「性別に関わらず成果で評価」が60%を超えていた。他にも、女性にとって働きやすい環境づくりに関連する項目や就業時間の柔軟化など、男女ともに働きやすくなる対応を行う項目が上位にランクインした。他方、女性のキャリア支援となる項目は10%未満と低水準にとどまった。
女性管理職の割合が全国的に上昇しない要因や課題については、「女性従業員の家庭と仕事の両立がしにくい」が唯一50%を超えた。次いで、「日本社会の性別役割分担意識の存在」「女性従業員が昇進を望まない」「候補者がいない」が30%台で続いている。企業からは、家事や子育てにより、他の従業員と経験に差が出てしまうこと、女性従業員自身の昇進を望まないなどといった考え方、さらに管理職の登用に向けた教育が行われてきていないことなどの声が多数あがった。
生産年齢人口の減少に拍車がかかり、人手不足が深刻化することで、女性の潜在的な労働力を掘り起こし、女性活躍の推進をする重要性が年々高まっている。企業は、女性活躍の支援に取り組むことが重要である。同時に政府には、女性への昇進や求める役割に対する働きかけを積極的に行い、女性自身の意識改革を進めることが求められる。また、性別を問わない育児の分担など、女性が安心して社会進出できる環境づくりも不可欠だろう。
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TEL:03-5919-9343
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~ 課題認識、「女性の昇進意欲」が企業規模間で大きな差 ~
加速度的に進む少子高齢化による生産年齢人口の減少にともない、さらなる人手不足の深刻化が懸念されている。このような状況下、女性の潜在的な労働力を掘り起こすとともに女性活躍を推進することで、労働力不足が深刻化する企業の支え役になることが期待されている。
政府は、女性管理職の割合が2020年代の可能な限り早期に30%程度となることを目指している。厚生労働省は、今年2月から雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会を重ね、「女性管理職比率については、企業の実情を踏まえつつ開示必須項目とすることが適当である」旨の報告書をまとめた。
また「女性版骨太の方針2024」では、東証プライム市場に上場する企業の女性役員の割合を、それまで設けられていた目標の「2030年までに30%以上」に加え、「2025年までに19%」にする新しい成果目標が掲げられるなど、企業における女性活躍の推進がますます求められている。
そこで、帝国データバンクは女性登用に対する企業の見解について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2024年7月調査とともに行った。
- 調査期間は2024年7月18日~31日、調査対象は全国2万7,191社で、有効回答企業数は1万1,282社(回答率41.5%)。なお、女性登用に関する調査は、2013年以降、毎年7月に実施し、今回で12回目
女性管理職割合の平均は10.9%、調査開始後初めて10%台とじわり前進
自社における管理職(課長相当職以上)に占める女性の割合を尋ねたところ、「30%以上」が11.4%、「20%以上 30%未満」が6.4%、「10%以上 20%未満」が9.1%、「10%未満」が25.5%だった。また、管理職が全員男性である企業は43.0%と前年から2.1ポイント低下したが、全項目のうち最も高かった。
政府目標の「30%程度」を達成している企業の割合は前年から1.6ポイント増と、上昇幅は過去最大となり、2013年の調査開始以降で初めて10%を超えた。上昇スピードが加速する兆しがみられる。一方、「10%未満」(0%を含む)は68.5%となり初めて7割を下回った。
管理職に占める女性の割合の平均は10.9%と調査開始後初めて10%台に乗った 。前年からの上昇幅は1.1ポイントと2021年と並び過去最大の伸びとなった。女性管理職の割合 女性管理職の割合を規模別にみると、「大企業」が平均7.6%で最も低かった。他方、「中小企業」は11.5%、うち「小規模企業」は14.4%となり、規模が小さい企業ほど女性管理職割合の平均は高い状況が続いている。
業界別では、女性従業員が比較的多い『小売』が19.4%で全体(10.9%)を8.5ポイント上回り、トップとなった。次いで、『不動産』(16.7%)、『サービス』(15.3%)、『農・林・水産』(12.7%)が上位に並んだ。一方で、工場における三交代制などで生活時間が不規則になりやすい『製造』や、2024年問題など長時間労働のイメージが強い『運輸・倉庫』『建設』など、女性従業員数が比較的少ない業界は低水準にとどまった。
女性管理職割合の平均 ~ 企業規模、業界別 ~
女性役員割合の平均は13.5%と過去最高も、「役員が全員男性」の企業は依然50%を超える
自社の役員(社長を含む)に占める女性の割合は平均13.5%と、前年(13.1%)から0.4ポイント増加し、過去最高となった。一方で、役員が全員男性の企業は52.4%と依然として半数を超えた。
女性役員割合の平均を規模別にみると、「大企業」が6.7%、「中小企業」が14.8%、うち「小規模企業」が19.1%となり、女性管理職と同様に規模が小さい企業ほど割合が高い結果となった。
女性役員の割合
32.7%の企業が「女性管理職割合の増加」を見込む。上場企業など規模が大きいほど「増加する」割合高く
自社における女性管理職の割合が、現在と比較して今後どのように変わると考えているか尋ねたところ、女性管理職の割合が「増加する」と見込んでいる企業は32.7%となった。他方、「変わらない」は42.4%だった。
女性役員については、今後「増加する」と考えている企業は13.0%となった一方で、「変わらない」は57.2%と過半数を占めた。
従業員数別にみると、「301人以上」では女性管理職の割合が今後「増加する」と見込む企業は65.0%と全体(32.7%)を32.3ポイント上回っており、女性役員の割合についても全体より15ポイント近く高かった。また、全区分のうち、従業員数「301人以上」における前年からの増加幅は管理職・役員ともに最大となった。とりわけ行動計画の策定や公表が義務化されている従業員数が多い企業では、女性管理職・役員の割合が増加すると見込む企業がより多い結果となった。
2023年3月期決算の有価証券報告書から「女性管理職比率」や「男女間賃金格差」などの開示が義務化された「上場企業」では、今後女性管理職が「増加する」と考えている企業の割合が67.1%となり、全体より30ポイント以上高かった。また、女性役員が「増加する」とする割合も35.6%と全体を20ポイント以上上回った。女性管理職・役員割合の今後の変化
女性活躍推進策、「公平な評価」が60%超でトップ。中小企業が行う対策は停滞感が漂う
女性の活躍推進のために自社で行っていることについて尋ねたところ、「性別に関わらず成果で評価」が61.2%でトップとなった(複数回答、以下同)。「性別に関わらず配置・配属」(50.6%)が続き、男女平等に関わる項目が上位に並んだ。以下、「女性の育児・介護休業の取り組み促進」(32.8%)といった、女性が働きやすい環境づくりに関する対応策が続いた。
また、「就業時間の柔軟化」(27.5%)および「時短勤務の対応」(27.1%)といった男女問わず働き手の家庭と仕事の両立への支援となる取り組みを行っている企業はおよそ4社に1社だった。
規模別では、「女性の育児・介護休業の取り組み促進」や「男性の育児・介護休業の推進」で大企業が中小企業を20ポイント超上回り、働き方に関する対策に規模間で大きな格差がみられた。女性活躍推進のために行っていること(複数回答) 要因や課題、「家庭と仕事の両立のしづらさ」が唯一50%超。「成果で評価」のみ、中小企業が上回る
日本において女性管理職の割合が上昇しない要因や課題について尋ねたところ、「女性従業員の家庭と仕事の両立がしにくい」が54.4%でトップとなり、唯一50%を超えた(複数回答、以下同)。次いで、「日本社会の性別役割分担意識の存在」(38.5%)、「女性従業員が昇進を望まない」(36.2%)が続いた。
規模別でみると、「その他」を除く13項目中「性別に関わらず成果で評価している」以外の12項目で「大企業」が「中小企業」を上回った。とりわけ「女性従業員が昇進を望まない」は11.3ポイントの開きがあった。
企業からは、「女性の妊娠や育休などにより、働けない期間が生まれ、キャリアや経験年数が不足してしまう」(医療・福祉・保健衛生)や「徐々に女性の意識改革は進んでいるが、昇進にともなう重責を好まない傾向にある」(建設)といった声が多数あがった。
女性管理職の割合が上昇しない要因や課題(複数回答)
まとめ
本調査によると、女性管理職割合は平均10.9%と過去最高を更新し、調査開始以来初めて10%を超えた。政府目標である「女性管理職30%」に該当する企業の割合も過去最高である11.4%となった。依然として政府が目指す目標に対して開きはあるが、女性管理職の割合の上昇幅は過去最大となり、じわり前進していることが分かった。
女性の活躍推進のために自社で行っていることについては、男女平等に関する項目の「性別に関わらず成果で評価」が60%を超えていた。他にも、女性にとって働きやすい環境づくりに関連する項目や就業時間の柔軟化など、男女ともに働きやすくなる対応を行う項目が上位にランクインした。他方、女性のキャリア支援となる項目は10%未満と低水準にとどまった。
女性管理職の割合が全国的に上昇しない要因や課題については、「女性従業員の家庭と仕事の両立がしにくい」が唯一50%を超えた。次いで、「日本社会の性別役割分担意識の存在」「女性従業員が昇進を望まない」「候補者がいない」が30%台で続いている。企業からは、家事や子育てにより、他の従業員と経験に差が出てしまうこと、女性従業員自身の昇進を望まないなどといった考え方、さらに管理職の登用に向けた教育が行われてきていないことなどの声が多数あがった。
生産年齢人口の減少に拍車がかかり、人手不足が深刻化することで、女性の潜在的な労働力を掘り起こし、女性活躍の推進をする重要性が年々高まっている。企業は、女性活躍の支援に取り組むことが重要である。同時に政府には、女性への昇進や求める役割に対する働きかけを積極的に行い、女性自身の意識改革を進めることが求められる。また、性別を問わない育児の分担など、女性が安心して社会進出できる環境づくりも不可欠だろう。
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担当:中村駿佑、石井ヤニサ
TEL:03-5919-9343
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